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ICの設計屋さんではないので、電流源を使うことはないのですが、勉強のために電流源をLTspiceでシミュレーションしてみました。
電流源は、基準電流源を作成し、それをコピーすることで作成しました。
定電流源回路
シミュレーション回路
今回作成した回路です。
難しい回路は作成できないので、シンプルな回路です。
抵抗R1とトランジスタQ1で、基準電流Irefを作ります。
その基準電流Irefをコピーして、電流Icopy1を作ります。
なので、Iref = Icopy1となるのが理想です。
Icopy1を流す負荷は抵抗R2で、1kΩとしました。
それと、電源電圧は5Vとしました。
基準電流Iref
基準電流Irefの目標値は1mAとしました。
なので、負荷R2に流れる電流の目標値も1mAです。
基準電流Irefは抵抗R1で調整しました。
トランジスタQ1はコレクタとベースがショートで、ベースとエミッタはダイオード1個分なので、トランジスタのコレクターエミッタ間の電圧はおおよそ0.7Vです。
そのため、抵抗R1にかかる電圧は4.3Vなので、抵抗値を4.3kΩにしてIref=1mAとしました。
コピーされた電流Icopy1
トランジスタQ1とQ2のベースはショートしているので、ベース電圧は同電位です。
なので、Q1とQ2のベース電流Ibは同じです。
コレクタ電流Icは、電流増幅率βとベース電流Ibの積なので、トランジスタQ1とQ2のコレクタ電流は同じになるはずです。
つまり基準電流IrefがコピーされたIcopy1が流れるはずです。
シミュレーション結果
IrefとIcopyのTransient解析
まずは基準電流Irefとコピーされた電流IcopyのTransient解析結果です。
Irefは、トランジスタQ1のコレクタで測定しました。
抵抗R1に流れる電流とトランジスタQ1のコレクタ電流は異なりますが、ベース電流Ibは小さいので、R1とQ1のコレクタ電流は同じとしました。
Transient解析の結果、基準電流Irefは1mAよりも少し低くなりました。ここは抵抗R1の調整がもう少し必要でしょう。
IrefとIcopyの値はほぼ同じになりました。なので、基準電流のコピーはうまく動いてそうです。
基準電流の2倍の電流を流す場合
シミュレーション回路
2mAの電流源が必要になった場合は、トランジスタを2個並列に接続します。
以下のシミュレーション回路では、Q3とQ4を並列に接続しました。
Irefはほぼ1mAなので、Icopy1もほぼ1mA、Icopy2はほぼ2mAが流れるはずです。
Transient解析結果
Transient解析のシミュレーション結果です。
先ほどの結果より、Irefのずれが大きくなりました。
トランジスタが増えて、ベース電流量が増えたのが原因かなと。
しかし、Icopy2は、ほぼIrefの2倍の電流値となりました。
温度スイープ結果
温度を0℃から100℃まで変化させて、Iref、Icopy1、Icopy2をシミュレーションしてみました。
温度スイープの設定です。

温度スイープのシミュレーション結果です。
IrefとIcopy1は20uA~30uA程度の変動、Icopy2はその倍の変動がありました。
この変動量はどうなんでしょう???実際のICではどのくらいの変動があるのでしょう???
このシンプルな回路構成にしては変動量が小さいと思います。ただ、それは使っている抵抗とトランジスタが理想に近い部品で、温度変動の影響をあまり受けないからだと思います。
npnバイポーラトランジスタの特性
電流増幅率
以下の回路で電流増幅率を調べてみました。
npnトランジスタを3つ用意し、それぞれのベースに1uA、5uA、10uAを流します。
この時にコレクターエミッタ間の電圧を0V~10VでDCスイープさせて、その時のコレクタ電流をシミュレーションしてみました。
シミュレーション結果です。
実際のトランジスタの特性では、活性領域ではコレクターエミッタ間の電圧が高くなれば、コレクタ電流も多少大きくなると思いますが、理想的なトランジスタなのでほとんど変化してませんでした。
それと、コレクタ電流はベース電流の100倍でした。なので、このバイポーラトランジスタの電流増幅率は100のようです。
ベースーエミッタ間電圧の温度特性
次に、ベースーエミッタ間電圧の温度特性を見てみました。
コレクターエミッタ間電圧は5Vに固定しています。
理想のトランジスタなので、温度特性は無いのかと思いましたが、けっこう変動していました。

コレクタ電流の温度特性
コレクターエミッタ間電圧を5Vに固定して、コレクタ電流の温度特性を見てみました。
こちらはほとんど変動なしでした。
まとめ
基準電圧源の生成もそうですが、基準電流源の生成も難しいです。
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